半数近くの犬や猫の唾液にはカプノサイトファーガ・カニモルサス菌がいます。
犬や猫に傷口を舐められたり、キスをしたりして感染します。
感染した場所は壊疽して、切断ということになります。
ほっとくと死に至る病気です。犬や猫の唾液には気を付けましょう。
↓厚生省からの呼びかけです。(引用文章です。)
一般の方向け
Q1 イヌ・ネコ由来カプノサイトファーガ感染症とは?
- A1 イヌ・ネコの口腔内に常在している3種の細菌、カプノサイトファーガ・カニモルサス(C. canimorsus) 、カプノサイトファーガ・カニス(C. canis)及びカプノサイトファーガ・サイノデグミ(C. cynodegmi)を原因とする感染症です。
この病気は、イヌやネコに咬まれたり、ひっ掻かれたりすることで感染します。なお、動物による咬傷に対し、報告されている患者数は非常に少ないことから、診断に至らなかった患者がいるとしても、本病は感染しても稀にしか発症しないと考えられます。
Q2 人への感染経路は?
- A2 主にイヌやネコによる咬傷・掻傷から感染しますが、傷口をなめられて感染した例も報告されています。
これまで、ヒトからヒトへの感染の報告はありません。
Q3 臨床症状は?
- A3 潜伏期間は、1~14日とされています(多くは1~5日)。発熱、倦怠感、腹痛、吐き気、頭痛などを前駆症状として、重症化した例が主に報告されています。
重症化した例では敗血症を示すことが最も多いですが、さらに播種性血管内凝固症候群(DIC)、敗血症性ショックや多臓器不全に進行して死に至ることがあります。敗血症以外では、髄膜炎を起こすこともあります。
なお、敗血症例の約26%、髄膜炎例の約5%が亡くなるとされています。
軽症例については報告が少ないため、その実態はよくわかっていません。
C. canimorsus及びC. canis感染の方が、C. cynodegmi感染よりも重篤な症状を示します。
Q4 国内のイヌやネコの保菌状況は?他の動物の保菌状況は?
- A4 国内のイヌの74~82%、ネコの57~64%がC. canimorsusを保菌しているというデータがあります。同様にC. cynodegmiの保菌率はイヌ86~98%、ネコ84~86%です。C. canisは近年報告された新しい菌種のため、現在調査中です。
いずれにしても、イヌ・ネコの保菌率が高いことから、全てのイヌやネコが保菌していると考えた方が良いでしょう。なお、これらの菌はイヌやネコの口腔内に常在している菌ですので、イヌやネコは保菌していても症状を示しません。
他の動物にも、その動物に特有のカプノサイトファーガ属菌が存在すると考えられますが、詳細は不明です。
Q5 飼っているイヌやネコからの感染の心配はないか?
- A5 ほとんどのイヌやネコが口腔内に保菌していることから、ペットとして飼育しているイヌ・ネコからの感染も数多く報告されています。また、健康な方でも、持病(糖尿病、高血圧、免疫抑制剤の使用、脾臓摘出など)を持っている方と同程度の患者数が報告されています。したがって、日頃から動物とは節度を持ってふれあうことが重要です。
Q6 飼っているイヌやネコの保菌状況を検査できるか。また、菌の排除は可能か?
- A6 イヌ・ネコの保菌検査に対応している民間検査機関はありません。本菌はイヌやネコの常在菌であることから、排除することはできません。従って、飼っているイヌやネコが保菌していることを前提に、過度なふれあいは避けましょう。
Q7 イヌやネコに咬まれたり引っ掻かれたりした時の対処方法は?
- A7 傷口を石けんと流水でよく洗いましょう。傷が小さくても感染する可能性があるので、万が一の時に医療機関に咬掻傷歴を伝えられるよう、家族にイヌやネコによる咬傷があったことを伝えておきましょう。
また、傷口をイヌやネコになめられないようにしましょう。
Q8 医療機関において、本菌の検査は可能か?
- A8 血液培養が行える検査施設であれば、菌の分離及びカプノサイトファーガである可能性が高いことを確認することは可能です。ただ、生育が遅い菌であり分離・同定に一定程度の時間を要することから、必要な治療は菌の同定を待たずに始めることになります。治療の手助けのためにもイヌやネコの咬掻傷歴を伝えることは重要です。
Q9 日本での発生状況は?
- A9 日本においては、1993年から2017年末までに計93例(うち死亡19例)が確認されています。大半がC. canimorsusの感染例ですが、このうちの重症例3例(うち死亡1例)は2016年に登録された新しい菌種であるC. canisの感染であることがわかっています(参考文献6参照)。また、C. cynodemgi感染は軽症例2例の報告があります。
感染事例の内容をみると、患者の年齢は、40歳代以上の中高年齢者が95%超を占めており、平均年齢は約64歳です。性別は男性が68例、女性が25例です。患者のうち、糖尿病、肝硬変、全身性自己免疫疾患、悪性腫瘍などの基礎疾患を有する方は約半数にとどまります。生来、健康な方でも感染・発症することが確認されています。
感染原因は、イヌの咬掻傷52例、ネコの咬掻傷20例、イヌ・ネコとの接触歴のみ18例、不明3例となっています。93例のうち、2011年以降の症例が68例で、本感染症の認知度の高まりや検査法の進歩によって確認される症例数が増えていると考えられます。しかしながら、把握されていない患者も多く存在していると推測されています。
Q10 諸外国での発生状況は?
- A10 1976年に米国で報告された敗血症例が、最初の文献報告とされています。その後、2017年末までに世界中で約500人の患者が報告されています。敗血症発症時の致死率は25%程度で、国内の報告とほぼ同様です。1996年のデンマークの報告では、人口100万人あたりの患者数が0.5人、致死率31%とされていましたが、2016年のフィンランドの報告によると同4.1人、5%です(重症例の致死率は19%)。軽症例がより多く把握されるようになったことにより患者数が増え、致死率は低下する傾向にあります。
Q11 感染予防のためには?
- A11 一般的な動物由来感染症予防の対応をしてください。日頃から、動物との過度のふれあいは避け、動物と触れあった後は手洗いなどを確実に行ってください。また、イヌやネコに咬まれたり、ひっ掻かれたりしないように注意しましょう。
本感染症だけでなく、一般的な動物由来感染症予防のためにも、ペットには、このような感染症のリスクもあることを理解した上で飼うことが重要です。
Q12 イヌ用、ネコ用のワクチンはないか?人用のワクチンはないか?
- A12 動物用及び人用、いずれもワクチンはありません。
ワクチンもありません。気を付けましょうね